残りの人数が両手で数えることのできるくらいに減り、ついに

F「ヒューロ」

Fに名を呼ばれ、Fの指さしている方の出口から出るように促される。

ヒューロ「…………」

ヒューロはデイパックを担ぎなおし、無言で指定された出口へと足を向け、
やはり無言で外……戦場へと踏み出した。


Scene 02



講堂から少し離れると、そこには深い森が広がっていた。
彼はいきなり襲われる事は無いだろうと思い、特に何も考えず足を進めていると
間も無く少し開けたところにでた。

出口から出ると、そこには深い森がひろがっていた。
特に何も考えず足を進めていると、少し開けたところにでた。
ヒューロは担いでいたデイパックを下ろし、開く。
バッグの中には、地図・コンパス・パン・水・ルールブック・そして彼に支給された武器、
1対のギミックアームであるEM335ドライハンダーが入っていた。
ドライハンダーを取り出し、装着していると、背後の茂みから少し背の高い草を踏みつける
僅かなガサッっという音が聞こえた。
本当に僅かな音だったが、傭兵として日々過酷な鍛錬をし、鋭敏になった彼の神経は
その音を聞き逃すことはなかった。
音がした方をそれとなく見ると、花月が何かをこちらに向けている。

ヒューロ「……っ!!!」

ヒューロはその場から飛びのく……と、その瞬間、一瞬前彼が居たところを物凄い熱量が通り過ぎていく。
飛びのいた勢いで崩れた体勢を直そうとしているとき、背中にチリチリした悪寒を感じ、
彼は再びその場を転がるようにし、離れる。
さっきやり過ごしたはずの光線がどういったわけか再び彼の脇をすり抜け、近くにあった木に当たり、
一瞬で焼き尽くした。
ヒヤリとしたが、これで相手の武器がどういったものであるか検討は付いた。
身を起こしながら花月の方を見ると、予想した通り、自動追尾光線を撃ち出す大型のレーザー砲である
T9ELXエイミングレーザーをこちらに向け、再びそのトリガーを引き絞らんとするところだった。
ヒューロはその場から、全力で駆け出した。

もう5分以上全力で走りまわっているが、なかなか花月に近づくことができない。
辺りにはレーザーによって焼かれた木が少なからずあった。
相手の武器が何であるかはわかったが、わかったところでどうにかなるものでもない。

ヒューロ「ハァ……ハァ…………」

さすがに息が上がってきた。いくら毎日訓練しているとはいえ、レーザーに狙われる緊張感を
抱きながら走るのはそろそろ限界である。
近づこうとするたびに、ホーミングするレーザーと新たに撃ち出されるレーザーによって進路を阻まれ、
結局近づくことさえもままならない。
それでも、ヒューロは僅かではあるが確実に花月との距離を詰めていた。
しかし、ヒューロはそれにもそろそろ限界を感じはじめた。

(足が重い。次で決めないとさすがにマズイかな……)

それでも足を止めず、接近するチャンスを伺っていると

『ドカーーーン!!』

と、近くで何かが爆発した。

花月「!!?」

花月の注意が逸れたのをヒューロは見逃すことなく、一気に花月へと詰め寄る。
花月への距離はおよそ7歩。その半分を瞬く間に走り詰め、あと3歩というところで
花月はヒューロの接近に気付き、エイミングレーザーの銃口をヒューロへと向けるが、それはあまりに遅かった。
サイトがこちらに合う前に、ヒューロは残りの距離を踏破しドライハンダーの左のアームを伸ばし、
銃口を自分から逸らし、肺に残った僅かな空気を吐き、腹に力を入れ、右のアームで花月のボディに
痛烈なストレートを打ち込む。

花月「カ…………ハ……ッ」

ドサッっと音を立てその場に崩れ落ち、花月は意識を失った。


ヒューロは、口から泡を吹き気絶している花月から奪い取り、エネルギーの残量を見るが、
もう殆どエネルギーは残っていない。

ヒューロ「まぁ、あれだけ撃たれればなぁ……」

そう呟きながら、ヒューロはやっと落ち着いて空気を吸う。

ヒューロ「結構危なかったなぁ」

なんていうことを、もう危機感をまったく感じとることのできない口調で言いながら、
さっきは気にする余裕などなかっが、爆発音の聞こえたところへと向かう。
そこは、花月に襲撃されたときにデイパックを置いたところだった。
が、そこにはデイパックはなく、直径1m程地面が抉れ、焼け焦げている。
花月のすぐ後ろの地面にも、同じクレーターができている。

ヒューロ「う〜ん、Fの陰謀かな?」

バッグが爆発したことは疑いようもなく、そして、そんなことができる者は管理側の人間だけである。

ヒューロ「まぁ、関係ないか……」

特に興味もないのでそうまとめ、それ以降は何も考えることもなくヒューロは歩き出した。
【花月 気絶】
【ヒューロ T9ELXエイミングレーザー(残弾少)入手】




BACK